第189回 国会 衆議院 文部科学委員会(平成27年12月1日)

HOME > 第189回 国会 衆議院 文部科学委員会(平成27年12月1日)

福井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原宏高君。

石原(宏)委員 質問させていただきます。

 安倍内閣が掲げる一億総活躍社会、地方創生、いずれも教育がその根幹になると私は考えております。何よりも安倍政権は教育再生を最重要施策として掲げており、その実現に向けて政府が一丸となって全力を挙げていかなければなりません。人材こそが資源である我が国にとって、公教育において未来を担う子供たちをどのように育んでいくのか、このことが我が国の未来を左右すると言っても過言ではありません。

 そうした中、学校の先生の数、いわゆる教職員定数について、来年度予算編成に当たって、少子化に伴って教職員の数を機械的に削減すべきであるといった主張があるという新聞報道が連日のようにされています。私としても非常に危惧をしております。

 本日は、この教職員定数の問題に焦点を絞って質問をしたいと思います。

 私は、教育というものは、現場での教員と子供との触れ合いがよりよい環境の中で行われることが最も重要だと考えております。教員定数のあり方についても、まずは現場の実態を踏まえたものでなければならないと考えています。

 今の学校現場の実態について、馳大臣がどのように認識されているのか、お伺いいたします。

馳国務大臣 まず最初に、衆議院の文部科学委員会が開催されるのは、私が大臣を拝命して初めてでありますので、改めて、職責をしっかりと果たしていく気持ちをお伝えし、また、誠意を持って答弁させていただくことをお誓い申し上げたいと思います。

 教育の現場の話でありますけれども、確かに、少子化ということで、児童生徒の数は残念ながら減りつつある状況はよく承知をしております。同時に、とはいいながらも、障害児の割合はふえております。また、小学校の加配ということを考えると、専科教員を求めていたり、また、不登校や子供の暴力に関する事案、ふえております。さらに、この十年で非常にふえているのが、日本語教育を必要とする外国人児童生徒の所属でありまして、こういったきめ細かい、一人一人の子供に対する配慮は、むしろ児童生徒が減っているという実情よりも、必要性が高まっているというふうに感じております。

 都道府県や市町村によっては、県単費、市単費で加配の教員を配置しておるのも実情でありますので、そういった実情を踏まえた対応が重要だと思っています。

石原(宏)委員 少子化に合わせて教職員を減らせばよいという議論がなされている一方で、今、馳大臣の御説明にあったように、現場はとてもそのような状況ではないということだと思います。むしろ、少子化であるからこそ、一人一人の子供たちの能力を教育を通じて最大限に伸ばしていくことが必要であるのではないか、それが安倍内閣が掲げる教育再生ということではないかというふうに私は考えるところであります。

 政府の財政制度等審議会、財政審では、学校がいじめや不登校等の個々の課題に対応するための定数、いわゆる加配定数を少子化に合わせて削減し、増加させたいのであれば、その教育効果に関するエビデンスに基づく要求をしなければならないといった、いわゆるエビデンス論が主張されています。私も、エビデンスに基づいた教育政策は非常に重要だと思いますが、一部の数値のデータのみに基づいて教育の成果をはかるということは困難ではないかというふうに思います。現場の実感とは大分かけ離れた議論になっているのではないかというふうに懸念をしているところであります。

 教育の効果については、数値的なデータのみならず、各自治体の取り組み事例や、子供や保護者の方の声なども十分加味して、全体像としてとらえていく必要があるのではないかと思いますが、大臣の見解をお伺いいたします。

馳国務大臣 石原委員御指摘のとおりだと、私も同様な認識を持っております。

 確かに、今財務省の方からも、予算折衝の中で、エビデンスに基づいた配置が必要ではないかというふうな指摘がありますが、それもまた一つの方向性として必要だともちろん思っております。

 しかし、教職員の配置と、学力とかあるいは学習状況の実態とか、また子供たちが落ちついて学校教育に取り組むことのできる環境整備といったものは数字だけではかり切れるものではないということは現場の教職員がよく存じておりますし、これまでの実態調査ももちろんそうではありますが、私も現場の視察などでも必ず言われるところであります。

 例えば、総理の御地元の山口県においても、学力テストの結果が余り思わしくないということで、独自に県単費で加配を加えて、以前と以降と比べて、学力テストの成果も実際に上げておられるところもございます。そういう自治体は、全国探せば枚挙にいとまがありません。

 そういった現場の声を十分に把握しながら、そういったエビデンスも活用しながら、機械的に削減することが全くナンセンスである、こういう決意を持って今後予算折衝にも取り組んでいくべきだと思っています。

石原(宏)委員 大臣が山口県の事例を紹介していきましたが、私の地元の東京都においても、国による加配措置に加えて都独自の加配措置を行い、習熟度別の少人数指導を推進し、個に応じた指導の充実を行っています。その結果としまして、例えば、都の学力調査結果における上位層の割合の増加を見てみますと、加配を配置していない学校では三〇%しか上位層の割合が増加していないにもかかわらず、継続して加配を措置した学校では七〇%増加しています。また、習熟度別少人数指導の実施によって子供の理解度が高まっているというデータも示されているところです。

 他の自治体でも、こうした事例研究や、教育効果を示すデータや事例は多くあるのではないかと思いますので、文部科学省としても、ぜひ積極的に発信していただきたいというふうに考えております。

 それから、大臣が紹介された山口県の例でも東京都でも、国の加配措置だけでは足りず、自治体独自で、実態に合わせた加配措置を行っているという状況であります。加配は、学校が対応せざるを得ない課題に対して措置されているものであり、仮に国が加配措置をやめてしまったとしても、地方は引き続き措置をしなければなりません。

 こうしたことから、少子化に合わせた加配定数の機械的な削減という主張については、教育関係者のみならず、全国知事会など地方六団体からも、かつてないほどの強い反対の声が上がっているというふうに聞いております。

 先日の経済財政諮問会議の委員会でも、長野県の飯田市の市長から、国による加配措置の削減がなされれば、そのしわ寄せは地方が負うことになり、義務教育に対する国の責任を放棄するものであるといった懸念が表明されたと伺っております。

 加配定数の削減は国から地方への財政負担のツケ回しではないかという、地方の懸念や、そういった声について、どのように大臣が受けとめられているか、お考えをお伺いいたします。

馳国務大臣 義務標準法の改正をしたときは、私も委員席におりましたが、多分これは全会一致で改正したと思います。

 その趣旨はやはり、都道府県が当時取りまとめておりましたけれども、その前に市町村において必要な加配等をメニューを出して、それを都道府県が取りそろえた上で、最終的に全体像の数字を見ながら文部科学省で決定をする、こういう方式に変えたということを覚えております。それも全会一致で法改正したということの意味を、私は今こそ、財務省、財務当局には理解を求めなければいけないと思っています。

 特に、加配については我々もやみくもにふやせと言っているのではなくて、戦略的に、現場の実情に応じて、ただし、財政には限りもありますから、そこを調整しながら、戦略的な充実、拡充、こういう表現で遠慮深く申し上げているつもりでありまして、このことについては、都道府県知事会からも、市町村会からも、また議会からも、しっかり文部科学省頑張れ、こういうふうなお声もいただいておりますので、そういった声を踏まえて交渉に臨んでいきたいと思います。

石原(宏)委員 ぜひ地方の意見をしっかりと踏まえていただき、教育再生に向けて政府が一丸となり、子供たちの教育環境の充実に取り組んでいただくことを期待申し上げまして、まだ質疑時間が残っておりますけれども、私の質問を終わらせていただきます。