第211回 国会 衆議院 内閣委員会 第5号

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新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

大西委員長 次に、石原宏高君。

石原(宏)委員 自民党の石原宏高でございます。

 早速、質問に入りたいと思います。

 新型コロナが発生して以来、三年間にわたり、多くの国民にとって初めての経験となる感染症との戦いは、国民の皆様に多大なる犠牲を強いてきたのではないかと思います。しかし、国民の皆様の努力のかいもあって、私の個人的な意見になりますけれども、新型コロナとの戦いにも光が見えてきたのではないかと思います。

 そんな中で、今回、総合調整機能を強化する観点から、内閣感染症危機管理統括庁の設置などを柱とする本法案が提出されました。

 法案の趣旨には私は賛同いたします。しかし、重要なのは、今回の新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえて、次なる感染症との戦いにおいて、政府が一体となって強力な取組を行っていくことが重要だと思います。そのために必要なのは、この三年以上にわたる新型コロナ対策をしっかりと総括することだと思います。もう既に各委員から同じような考え方が述べられておりますが、何が効果的で、何が足りなかったのか、今回の経験を踏まえて次の備えをどういうふうに行っていくのか、そんな観点で質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、後藤大臣に御質問させていただきます。この三年間のコロナの対策、総括についてお伺いしたいと思います。

 内閣感染症危機管理統括庁が設置された後も、その体制の下で有効な感染症対策を実施するためには、平時からの政府一体となっての取組が必要不可欠です。そのためにも、改めてこのタイミングで政府として新型コロナウイルス感染症対策の総括を国会も含めて行っていく必要があると思います。

 そこで、後藤大臣に、これまでの三年間の、政府・与党一体となっての新型コロナウイルス感染症対策に取り組んでこられましたけれども、この三年間の取組を振り返って、その成果や課題についてどのようにお考えになっているのか、また、先ほど、昨年の、有識者会議を五回やって、医療団体の方や経済界の方、また地方自治体の方から意見を聞かれたと言われておりますけれども、そういう中で、現場の保健所の職員の方々の意見や病院の医師や看護師さんの方々の意見も反映されて有識者会議が行われたのかどうか、その点をお伺いいたします。

後藤国務大臣 まずは、この三年間の取組を振り返ってということでありましたので、ちょっと繰り返しになる点もあるかとも思いますけれども申し上げます。

 政府としては、国民の命と暮らしを最優先で守る観点から、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りつつ、科学的知見やエビデンスを重視して、コロナ対策に最大限に取り組んできたというふうに思っております。

 こうした取組によりまして、新型コロナの人口当たりの感染者数はG7の各国と比べても低い水準に抑えられましたし、GDPや企業業績は既に新型コロナ前の水準を回復しておりまして、有効求人倍率もコロナ前の水準を回復しつつあるというふうに承知をいたしております。

 一方で、今御指摘のありました新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議においては、医療関係団体、地方団体、各方面からの意見聴取も含めまして、五回にわたって熱心な御議論をいただいて、それまでの政府による新型コロナ対応の検証を行うとともに、次の感染症危機に向けた中長期的な課題を整理し、報告書を取りまとめていただきました。

 報告書では、初動期において、政府と都道府県が一体となって危機対応ができる仕組みづくり、それから、感染が著しく拡大した場合も行政機関の機能を維持できる仕組みづくり、一元的に感染対策を指揮する司令塔機能を整備すること、そうしたことの指摘がなされたところでありまして、今回の法改正案では、このような新型コロナウイルス感染症への対応の経験と課題を踏まえて、感染症の発生及び蔓延の初期段階から政府対策本部が迅速かつ的確な措置を講ずるための仕組み等を整備するとともに、内閣官房に内閣感染症危機管理統括庁を設置して、感染症の発生及び蔓延の防止に関する施策の総合調整等に関する事務及び政府対策本部等に関する事務を所掌することなど、感染症危機に対する司令塔機能の強化を内容とする法案を出しております。

 こうした司令塔機能の発揮を通じまして、国民の命、健康の保護と社会経済活動との両立を図りながら、感染症危機に迅速的確に対応してまいりたいと思います。

 そして、今、感染症との戦いは、まだ終わったわけでもありません。そしてまた、今、次への対応ということで、こうした制度的な法律も出させていただいているので、まずはこうしたことをきっちりと対応させていただきつつ、今先生から御指摘あったように、五回ヒアリングをした中に個人からのヒアリングがあったのかと言われると、それは、ある程度、普遍的に、団体を代表して意見を言っていただいたので、そういう意見聴取は行ってはいませんので、いろいろな方の御意見をしっかりと踏まえたそういう反省、あるいは、きちっとした整理を踏まえた上で、今後とも、よりよい制度やよりよい体制づくり、政策づくりに取り組んでいかなければならないというふうに思っております。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 次に、マスクの着用についてお伺いしたいと思います。

 三月十三日から、マスクの着用は個人の判断に委ねられます。その対応をめぐって、デパート、スーパー、公共交通機関、一般の会社でも、少し混乱があるのではないかと思います。また、対応も分かれているのではないかと思います。諸外国の状況を踏まえれば、こうした弾力的な措置をもう少し早い時期に取るべきだったというような指摘もあります。

 改めて、マスクの着用を奨励してきたことは感染防止に対してどの程度効果があったというふうに政府として考えられているのか、今回のこのタイミングでのマスク着用の考え方を見直すに至った理由、背景、また、今後もやはり、ある程度、国民の皆様に、どういうところだったらマスクをした方がいいよとか、それを少し示した方がいいと思うんですけれども、どういうふうに、どういう媒体を使ってそういうことを示していくのか、その点をお聞かせいただければと思います。

鳥井政府参考人 お答え申し上げます。

 マスクの取扱いにつきましては、二月十日の政府対策本部決定において、三月十三日から、現在の、屋内では原則着用、屋外では原則不要としている取扱いを改め、行政が一律にルールとして求めるのではなく、個人の主体的な選択を尊重し、マスクの着用は個人の判断に委ねることを基本とすること、政府は各個人のマスク着用の判断に資するよう、感染防止対策としてマスクの着用が効果的である場面などを示し、一定の場合にマスクの着用を推奨することといたしました。

 この見直しですが、専門家からいただいた、マスクを含む基本的な感染対策に関して、個人の判断に委ねることを基本とし、今では過剰とも言える感染対策はできる限り早期に見直しつつ、新型コロナの特性を踏まえて、有効な方法について、引き続き丁寧に情報を発信すべき等の御意見を踏まえたものでございます。

 また、この見直しに当たりましては、専門家から、マスクの有効性に関する知見をお示しいただきました。それとともに、併せて、基本的な感染対策は引き続き重要である、重症化リスクが高い方への配慮は必要であるという御意見もいただいております。

 これを踏まえ、政府としては、医療機関を受診するときですとか、高齢者など重症化リスクが高い方が多く入院、生活する医療機関や高齢者施設等を訪問するとき、あるいは通勤ラッシュ時等、混雑した電車やバスに乗車するときには、重症化リスクの高い方への感染を防ぐためにマスクの着用をお願いすることといたしました。また、医療機関や高齢施設等の従事者は、引き続き勤務中のマスク着用を推奨することといたしております。

 こうした見直しの趣旨や、マスクの着用をお願いする場面につきましては、混乱が生じないよう、テレビCM等も活用しつつ、引き続き丁寧に周知をしてまいりたいと考えております。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 次に、水際対策の効果とその総括についてお伺いしたいと思います。

 有識者会議の、次の感染症危機に向けた中長期的な課題によると、水際対策について、これらの措置の実効性や隔離、停留などに使用する宿泊施設などの不足が指摘されたとされています。

 私の選挙区にはいろいろな企業がありますけれども、ある企業さんから、やはりコロナの蔓防のときに、ドイツから精密加工機械を輸入したのに、それを取り扱う技術者が入国できなくて困っているというような悲鳴なんかも上がっておりました。

 地方創生の観点からも、今や地方の主要産業となりつつある観光業への打撃は深刻なものでもありましたし、現在は観光客が戻ってきて、北海道へのスキー、雪見客など、インバウンドも順調に回復しています。

 入国制限などの実施は社会経済活動への影響が極めて大きいことから、科学的なエビデンスや諸外国の水際措置の状況も勘案しながら難しいかじ取りが迫られていたと思います。

 そのことを理解した上で、今回の一連の水際対策は適切だったのか、どのような効果を上げたか、また今後はどうされるのかをお聞きしたいと思います。また、確認ですけれども、新型コロナが五月の八日に五類扱いとなれば、水際措置は完全に撤廃されるという理解でよろしいでしょうか。

井関政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のこれまでの水際対策について、政府としましては、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りつつ、内外の感染状況やニーズ、主要国の水際対策等の状況等を踏まえながら、適切に判断することとしてきたところでございます。

 特にオミクロン株につきましては、令和三年十一月末の発生当初から水際対策を講じてまいりました結果、病床確保やワクチン接種の推進など、国内の対応体制を整備する時間を確保できたものと考えております。そして、昨年十月には、ビザなし渡航、個人旅行の再開等の緩和を行い、インバウンド観光を復活させたところでございます。

 引き続き、内外のニーズ等を踏まえながら、きめ細かく適切に判断してまいる考えでございます。

 また、委員から御指摘いただきました新型コロナウイルスの感染法上の位置づけの変更後の水際対策につきましてでございますが、この変更に伴いまして、新型コロナウイルスの検疫法上の扱いも変わることとなりまして、無症状者の入国時検査、陽性者の隔離など、検疫法上の水際措置が適用されないこととなるというところでございます。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 次に、この改正によって、政府対策本部長たる内閣総理大臣が都道府県知事などに対する指示権の発動可能時期が前倒しをされます。

 それでお尋ねいたします。

 この三年間で、蔓防や緊急事態宣言になる前に知事などに指示が出せず、具体的にどのような不備が生じたのか。また、蔓防になる前の指示もいろいろとあると思うんですけれども、例えば飲食店の営業自粛とか、さっきも議論になりましたけれども、休校とかイベントの自粛などありますけれども、新たに蔓防の前に政府対策本部長たる内閣総理大臣が指示が出せる、その具体的な例についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。また、政府が指示を出すかどうかは一定の基準に基づいて決定されるのではないかと私は個人的に思っているんですけれども、例えば、感染者の人数や新たな感染症の症状の重さなどが考えられますけれども、政府として、現在、どのような基準に基づいて蔓防の前の指示権が発動されるのか、その点を教えてください。

柳樂政府参考人 指示権発動の前倒しに関するお尋ねがございました。

 これは先ほどから度々出てまいります、昨年開催いたしました有識者会議の報告書におきまして、感染の初期等に、政府と都道府県との間において、特措法に基づく施設の使用制限の対象施設の範囲の考え方などにつきまして調整が難航した事例があったということ、このため、初動期等におきまして、政府と都道府県が一体となって危機対応ができる仕組みづくりが必要である、このような指摘がなされました。

 このことを踏まえまして、今回の法律改正案では、政府対策本部長、内閣総理大臣でありますが、新型インフルエンザ等蔓延防止等重点措置に係る事態、あるいは新型インフルエンザ等緊急事態に至る前であっても、政府対策本部が設置されている間において指示を行うことができる、そういう内容を盛り込んでいるところでございます。

 指示を行う基準というお尋ねでございますが、法律上、要件を明確に規定をしてございます。

 具体的に申しますと、政府対策本部が設置されている間から指示を行うことができるようにするに当たりましては、一つ目に、新型インフルエンザ等の蔓延により、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるにもかかわらず、二つ目の要件として、総合調整に基づく所要の措置が実施されない場合であって、三つ目として、新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときであって、四番目に、その必要な限度において指示を行うことができるということとしておりまして、そういうような要件に基づいて、政府対策本部から指示が出せるということでございます。

石原(宏)委員 ちょっと私も勘違いしていて、要件はあるんですけれども、感染者の数とか症状とかではない、もう少し幅広い考え方で、最初は調整をして、都道府県にお願いするわけですけれども、それがかなわなかったときには指示権が発動されるということで理解をいたしました。

 次に、今回のコロナに関して、いろいろなシステムを作ってきたと思うんですけれども、今、新型コロナ対策のために作ってきた幾つかのシステムが今後の新たな感染症に利用可能なのかどうか、お伺いしたいと思います。

 例えば、新型コロナウイルス感染確認アプリ、COCOAとか、また、入院をされている患者さんの状況を医療機関で入力をしていただく、厚労省のMyHER―SYSとか、コロナの接種記録システムであるVRS、また、私も携帯に入れておりますけれども、コロナのワクチンの接種証明アプリ。

 今回、これらのシステムが導入をされましたけれども、新たな感染症が再度日本を襲った際に、そのままこのシステムが活用できるのか。危機が現実になってからシステムを開発するとなると、また時間がかかってしまうと思いますので、平時からの備えが重要と考えますけれども、このシステムがそのまま使えるのかどうか、また平時の備えとしてどういうふうにしようとしているのか、お教えいただければと思います。

内山政府参考人 お答えいたします。

 今回コロナ対応で導入されたシステムの次の感染症への活用につきましては、次の感染症の感染力や病原性に応じて必要な感染症対策を踏まえた機能を備える必要が求められること、新たな技術やICT機器の活用も考慮する必要があることから、そのまま活用できるとは一概に言えないと考えておりますけれども、御指摘のとおり、有事となってからでは、短期間で構築する必要があるなど、様々なハードルがあることから、平時から活用しているシステムを有事でも使えるようにするという考え方が重要だというふうに考えてございます。

 例えば、今例示いただきましたCOCOAにつきましても、デジタル庁と厚生労働省が先月取りまとめたCOCOAの総括報告書がございますけれども、その中でも、その旨を記載しているところでございます。

 また、ワクチン接種につきましても、新型コロナワクチン接種に限らず、予防接種事務全体のデジタル化のための環境整備を、地方公共団体の基幹業務等システムの統一、標準化の目標時期、令和七年度を目途に取り組まれていると承知しておりまして、御指摘のように、システムに関して平時からの備えに努めたいというふうに考えてございます。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 そうですね、確かに、予防接種は、共通化をしていくと、そしてそれが新たな感染症のワクチンに使えるとなると非常にいいと思いますので、是非、全国の自治体の、なるべく統一化をして、いざというときに使えるようにしていただけるといいのではないかというふうに思います。

 次に、ちょっと何問か飛ばしてしまいますが、中小企業の対策についてお伺いをしたいと思います。

 コロナ禍で、事業者の事業継続を支援する給付金や資金繰り支援、事業再構築補助金、各種の需要喚起策などが講じられてまいりました。特に、実質無利子無担保のいわゆるゼロゼロ融資は、コロナ禍にあって、多くの中小企業の経営を支えてきました。

 他方、業績の立て直しがままならないまま、返済開始の期限が迫る企業も、現状、増えているところであります。足下の急激な物価高も重なり、資金繰りに行き詰まって倒産する中小企業も徐々に出てきているところであります。

 その他、コロナとは関係ありませんけれども、後継者不足や資金難といった固有の課題も抱える中で、コロナの収束後を見据えて、今後、中小企業に対する支援をどのように講じていこうとしているのか、政府のお考えをお聞かせください。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 コロナの影響の長期化ですとか物価高、今委員御指摘ございましたように、非常に多くの中小企業は厳しい状況にあるわけでございます。

 御指摘のとおり、これから多くの中小企業が民間ゼロゼロ融資の返済の本格化の時期を迎えることになります。既に利用者の六割程度の方は返済中でございますけれども、これから返済に苦しむ事業者の皆さんも出てくると思われます。

 こうした事業者の皆さんに対しては、まず、各種の経営改善事業、傷む前に経営改善事業を実施するということもやっております。あるいはまた、返済期間を長期化しつつ、その間に収益力の改善を支援するコロナの借換え保証制度を一月十日から開始しておりまして、資金繰り支援をしているところでございます。

 それでもなお、増大する債務に苦しむ中小企業の皆様には、四十七都道府県に設置されている中小企業活性化協議会がございます。こちらで、個別の事案に応じた債務の圧縮あるいは債務の減免も含む再生支援を行っております。業種別の再生支援事例集の作成なども通じまして、取組の一層の強化を図ってまいりたいと思っております。

 また、この分野に深い知見や多くの経験を有する商工中金、このノウハウも活用して、地域の金融機関と連携した対応も強化してまいりたいと思っております。

 それから、コロナ収束後でございます。御指摘のとおり、意欲的な事業転換、あるいは事業承継、こういったものも取組を後押ししていく必要があると思っておりまして、事業再構築補助金によりまして、中小企業の新分野展開、業態転換などの取組、それから、事業承継・引継ぎ補助金によりまして、事業承継や引継ぎ後の設備投資や販路開拓などの新たな取組や、事業引継ぎ時の専門家の活用などを支援してまいりたいと思っております。

 こうした施策を総動員いたしまして、引き続き、中小企業の支援に万全を期してまいりたいと考えております。

石原(宏)委員 本当に光が見えてきていると私自身は感じているんですが、是非、中小企業の支援もしっかりと行っていただきたいというふうに思います。

 ちょっとまた質問が飛んでしまうところもあるんですが、今回の法改正により、市区町村は新感染症対策を都道府県に代行してもらうことが可能となります。また、その事務の範囲も拡大されます。具体的には、どのようなケースになったら、市区町村の業務を都道府県が代行をするようなことになるのか、また、その代行の範囲というのはどこまで拡大されるのか、そして、今までも、コロナ、三年間ありましたけれども、市町村において都道府県から人員派遣をしてもらった例等、具体的な例等ありましたら、教えていただければと思います。

柳樂政府参考人 お答えいたします。

 有識者会議の報告書におきまして、「行政機関内でクラスターが発生し庁舎を閉鎖する事態が生じたことがあったことから、対策を実施すべき行政機関を都道府県がサポートするなど、その機能を維持できる仕組みづくりが必要である。」、こういう指摘を受けたところでございます。

 お尋ねの、都道府県知事が市町村長の事務を代行を行うケースということでございますが、このような有識者会議報告書の指摘を踏まえまして、今回の法改正案では、都道府県知事による市町村長の事務の代行につきまして、感染症法に基づく事務も可能となるよう対象事務を拡大する、これは今までは特措法に基づく事務に限られておりました。そのように対象事務を拡大するとともに、政府対策本部設置時から行うことができるよう、要請可能時期を前倒すということとしております。

 しかし、どのような場合に市町村長が都道府県知事に代行の要請を行うことができるか、こういうことにつきましては、従来から、新型インフルエンザ等の蔓延により当該市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったと認めるときという、こういう規定がございまして、この点については改正前と変わらないものでございます。

 今申し上げた、市町村がその全部又は大部分の事務を行うことができなくなったときというのはどういう意味なのかということでございます。これは、例えば、例でございますが、自治体の職員間におけるクラスターの発生や濃厚接触者に該当したことによる自宅待機の要請などによりまして多くの職員が出勤できなくなって、その結果、市町村がその機能をほとんど果たせなくなったときというようなところを想定をしているということでございます。

 次に、代行の対象となる事務の範囲でございますが、これは、新型インフルエンザ等対策のうち、地方公共団体が特措法及び感染症法の規定により実施する措置であって、新型インフルエンザ等の蔓延を防止するため特に必要があるものを、この法律上、特定新型インフルエンザ等対策として政令で定めることとしております。

 その具体的な事務の内容につきましては、今後、法施行までの間に検討いたすことになりますが、例えば、感染症法第十二条に基づく医師からの発生届の受理、HER―SYSへの入力に関する事務などなどを想定しているところでございます。

 最後に、人員派遣を行った事例の有無についてでございますが、過去の人員派遣の実績について網羅的に把握できているわけではございませんが、例えば、緊急事態あるいは蔓延防止等重点措置が公示されていない状況におきまして、保健所業務の負担軽減の観点から、市の保健所に対して応援職員を派遣している事例があったということを承知をいたしております。

石原(宏)委員 ありがとうございました。

 もう残すところ、時間が少なくなったので、最後、一問。

 先ほども、午前中の議論でも日本版CDCの話が出ておりましたけれども、コロナ対策に関しては、これまで、厚労省における感染症の専門家の会議や内閣官房の経済学者や感染症専門家による会議などが設置されておりましたけれども、感染症対策には、やはり、午前中の議論もありましたけれども、専門家の知見がしっかりと正確に司令塔に提供される必要があるというのは論をまたないと思います。

 厚生労働省における、いわゆる日本版CDCの、健康危機管理研究機構の設立のための法案が提出をされる予定でありますけれども、今後、同機構に期待する役割についてお伺いをさせていただければと思います。

 そして、今でも、国立感染研究所の脇田先生なんかはこの会議に参加をされているんですが、新たな統括庁の中の会議とかには、恐らく新たなCDCのメンバーの方が会議に出てこられるのではないかと思いますが、そんな将来のイメージでいいのかどうか、教えていただければと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立健康危機管理研究機構、いわゆる日本版CDCでございますが、米国のCDCと異なる独自の特徴といたしまして、自らが病院という臨床機能を持つこととしております。これによりまして、基礎から臨床までの一体的な研究成果に基づく質の高い科学的知見を迅速に提供する役割を担うこととなります。

 具体的には、統括庁や厚生労働省の求めに応じまして、政策決定に必要な科学的知見についての調査研究を行い、平時から質の高い科学的知見を統括庁や厚生労働省に迅速に提供するとともに、パンデミック時には、政府対策本部長の招集を受けて政府対策本部で意見を述べることにより、統括庁等の政策決定につなげる役割を担うこととされております。

 これによりまして、感染初期における調査分析等の初動対応の強化、患者受入れ機能や重症患者等の診療機能の強化、国内外の治験ネットワークの中核的役割を果たすことによる研究開発力の強化などの効果が見込まれ、科学的知見の質とスピードの強化につながるものと考えているところでございます。

石原(宏)委員 時間が来ました。終わります。