社会保障制度全般
更新日:2021年8月12日
小泉純一郎政権下の「骨太の方針2006」において社会保障関連歳出の高齢化による自然増毎年7500億円に対し、制度改革等による合理化で毎年▲2200億円を図り5300億円増に止めるとの方針が取られたため、細部に支障を来たし頓挫することになりました。
診療報酬が引き下げられる中、医療リスクの高い、小児科や産婦人科に医師がならない、患者数の少ない過疎地に医師が行かない、利用者負担の拡大やサービスの削減で現場は立ち行かない等、問題が生じ、社会保障給付の削減にストップが掛かってしまったのです。
【診療報酬改定の推移】
2002年 ▲2.7%
2004年 ▲1.05%
2006年 ▲3.16% (小泉政権時代)
2008年 ▲0.82%
2010年 △0.19%
2012年 0.00%
2016年 △0.46%
2018年 △0.55%
2020年 △0.55%
このことを教訓に、自公民の三党は、「社会保障と税の一体改革」で合意し、消費税を5%から段階的に8%、10%と引き上げることで、上乗せ分を社会保障に充当することで社会保障制度の持続と消費税引き上げ分の一部を充実策に充当することで合意をしたのです。
日本が抱える現在の一番の問題は少子高齢化並びに人口減少です。その結果、今年67歳~69歳(1947年~49年生まれ)の所謂団塊の世代(最も人口の多い世代)が、75歳になってゆく2020年代が、医療、介護共に負担が大きくなる時代となります。更に、団塊ジュニアが75歳を迎える2040年代後半から2050年代までも、現役世代の減少により継続的に、医療、介護の負担が国民に重くのし掛かる時代を迎えるのです。
財務省は、かつて、国民負担率(国民所得に占める租税負担と社会保険料負担の割合)が他の先進国と違い日本は低いので、国民に税や保険料負担をお願いすれば、何とかこれからの高齢化時代を乗り越えられると考えました。社会保障制度の問題は、正に国民への負担の割合と、サービスの割合をどう折り合いを付けさせるのかが、課題です。現在は、タイミングの良し悪しはあるものの、消費税を社会保障制度維持のために引き上げることに関し国民の同意が得られていると私は考えています。
【国民負担率】
(日本は2018年度、他国は2018年度 出典:財務省HP)
日本: 44.3%
アメリカ: 31.8%
イギリス: 47.8%
ドイツ: 54.9%
スウェーデン:58.8%
フランス: 68.3%
国会での議論を聞いていると国会議員は医療にせよ、介護にせよサービスを充実させることを主張していますが、その財源となる保険料や税の国民負担に関しては十分に語られていません。社会保障の議論をする際、やはり、財源となる保険料と税の負担と社会保障サービスのバランスに関し、数値を持って議論しなければ、国民の理解も安心も勝ち得ないはずです。
ここからは、自公民で合意した 「社会保障と税の一体改革」による社会保障の充実に関してお話しします。消費税が10%に引き上げられた際、引き上げ分5%の内1%相当を以下の施策に充当することになりました。しかし、2014年12月の総選挙に際し、2015年10月からの消費税10%引き上げが見送られたため、子ども子育て支援の7,000億円のみ2015年4月より実施されました。
その後、2017年10月の総選挙において、消費税の2%引き上げ分のうち1%は幼児教育の無償化、高等教育の無償化に充当されることに政策が変更されました。消費税が10%に引き上げられた2019年10月以降、適時、幼児教育の無償化、高等教育の一部無償化が実施されています。
【社会保障と税の一体改革による社会保障の充実】 合計2.8兆円程度
- 子ども子育て支援充実(待機児童の解消など量的拡充と質の向上) 7,000億円
- 医療・介護サービスの提供体制改革・医療・介護保険制度の改革等 1兆5,000億円
・地域包括医療システムの構築、医療保険制度の財政基盤の安定化、介護保険の一号保険料の低所得者軽減強化等 - 現行年金制度の改善 6,000億円
・低高齢所得者・障害者への福祉的給付(年プラス6万円)、受給資格期間の短縮、遺族年金の父子家庭への拡大
最後に、繰り返しになりますが、今後も、負担と給付の内容、国際比較等をしっかり説明しながら、日本の財政状況も勘案しつつ、社会保障制度について、国民の理解を得ながら、議論することをお約束申し上げます。